名も無きおじさんの読書感想文

国語力のたいしてない名も無きおじさんが独自の読書感想文を書く予定。

こころ 夏目漱石

読みやすさ☆☆
面白さ☆☆
内容☆☆☆

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30年以上前の高校一年生の時に、読書感想文用に買わされた小説【こころ】。
その当時は、夏目漱石さんが明治の人で言葉使いが古く、『よござんすか?』とか使わないよって思ってました。
『恋は罪悪ですよ』って頻繁に出てきて、その当時は、さっぱり理解出来ませんでした。
登場人物のKは死ぬし、先生も最後には死ぬ。なんで死ななアカンのか、さっぱり理解出来ませんでした。
ただ死ぬだけの暗い小説という感想でした。
今読んでみると良い本なのですが、その当時の自分では難解すぎて理解できず、読書を遠ざける原因にもなりましたね。
中学時代の愛読書が少年ジャンプ。高校時代は、少年マガジンに変わりました。
時を得て、40をすぎて、暇をもてあそぶようになり、もう一度【こころ】読んでみる気になったんですね。
3回ぐらい読んでますけど、今回久しぶりに、読んでみました。
やはり重苦して、なかなかペーパーが進みません。半分くらいで中断。DVD見たり、読みやすい本読んだりでリフレッシュ。
どうしても人間の心の奥を描くと暗くなる。【人間失格】なんかもそうだろう。
【先生と私】【両親と私】【先生と遺書】の三部構成になっています。

【先生と私】では、海で偶然出会った年上の男の人に興味を持ち、知り合いになりたいと追いかける。偶然を装い何回か近づいていくうちに、話すきっかけが出来て、家に訪問して良い間柄になる。その人を先生と呼ぶようになる。何回も先生宅を訪ねるようになり、奥さんとも親しく話せる間柄になる。
先生は職業につかないで、ぶらぶらしてる事を知る。いつしか、大学の教授の授業より先生との談話の方が勉強になると思い出す。確かに大学の勉強で身に付いた物は何もないですね。いい本を読んでるほうがいいと思います。人の成長は、人との出会いと本との出会いの2つだと誰か言ってました。和民の社長だったかな?

『恋は罪悪ですよ』
『かつてはその人の前にひざまずいた記憶が今度はその人の頭の上に足をのせさようとする』
『人間は誰でもいざという間際に悪人になる』
『金さ君。金を見ると、どんな君子でもすぐ悪人になるのさ』

などの先生の言葉に主人公は、よくわからないので、先生の経験からくる思想を教えてくださいと頼む。
先生は、自分の過去を語る事を拒んだが、若者の熱意に負けて、近いうちに教えましょうと約束するのであった。

今現在の自分考えてみても、お金や女の事で悩んでると思う。明治の時代からそうやったんですね。
そして先生は、お金や女で人が変わってしまった経験をする。それは、後に先生から送られる手紙に書かれていた。

【両親と私】では、父親が腎臓の病気かなんかで、病状が良くないので実家に帰る。
先生は尊敬できるけど父親は尊敬できない。普通の人に見える。そのくせ生活費はしっかり貰う。今現在でも、そんなものかもしれない。親の事は知りすぎて尊敬できませんね。
主人公は、親の病状が悪いのに先生の事ばかり考えてしまう。
長引く父親の病気で実家から離れられなくなり、先生は遺書と思われる手紙が送られてきた。それを見て危篤の父親を置いて汽車に飛び乗るのだった。
自分の父親が死にそうだけど、先生の安否のほうが大事になったんですね。おそらく先生は死んでるだろうけど、そうせずにはいられなかったんでしょう。若さゆえに走りだす。

【先生と遺書】では、先生の両親が20にならな頃に腸チフスで亡くなった。その結果、親戚の叔父さんに家の財産を任せる事になった。先生が東京の大学に行っている間、家の管理も任せていた。その間に叔父さんに財産を使われていたのである。相当目減りした財産を金にして、先生は故郷に二度と戻らない決心して東京に戻ったのです。その結果誰も信用できなくなった。しかし、下宿した家に住む奥さんやお嬢さんと触れあってうるうちに心が和らいだ。お嬢さんに密かに心ひかれていた。
その家に、偏屈だけど先生より学力がある親友のKを招き入れる事にした。
初めKが下宿の奥さんやお嬢さんと仲良くなる事を歓迎していた先生だが、お嬢さんと仲良くなり過ぎと嫉妬しだした。Kのほうが良い男で、お嬢さんもKのほうが好きなのかもとも思ったりした。そうこうするうちにKがお嬢さんが好きで苦しいと告白してきた。それはまずいと、あらゆる策略を練って、お嬢さんを諦めさそうとした。そして隙をついて奥さんにお嬢さんをくださいと頼んだ。結婚は了承された。
Kに謝る事ができなかった。
その数日後、Kは自殺したのであった。
100%先生のせいでは無くても引き金になったのは明白。
そのトラウマがあって結婚後、先生は社会に出て働けなくなったのです。何かしようとすると何かに引っ張られる感じがするし、お前に世にでる資格はないと声が聞こえてくる。
酒に溺れた時もあり、酒をやめた後は書物を読むようになったが鬱になりそうになった。
自殺しようとした事、二、三度あった。そのたび妻のために生きていこうと踏みとどまった。
そういう事があった成り果てが、主人公が会った先生であった。
先生は、主人公に自分の過去を手紙で告白した後自殺を決意する。妻には、Kが自殺した原因が自分にあって、その事で人が変わってしまった事を秘密にしてくれと。妻の思い出に黒い点をうちたくないと。
なかなか息苦しくなる話ですね。苦行を味わいたい人にオススメです。!